Vol16 摂りすぎはよくないけど甘いものって頭にいいんだね!糖質は脳唯一のエネルギー源「甘いもの」の力

疲れたときに甘いものが
ほしくなる理由とは

 甘いものは脳の栄養源という話を耳にしたことがある人は多いでしょう。甘いものの正体は糖質です。私たちのエネルギー源として活用されており、特に脳はブドウ糖だけをエネルギー源としています。脳の重さは体重の約2%ですが、消費するエネルギー量は全体の約20%。疲れたときに甘いものが食べたくなるのは、血液中のブドウ糖が不足し、脳に十分な栄養が行きわたっていないため。まさに脳が甘いものを欲している状態なのです。
 また、ブドウ糖は、精神を安定させる神経物質セロトニンという物質を作り出すのに一役買っています。つまり糖質には、私たちを心身ともに満足させる作用があるのです。
 糖質はいくつかの種類に分類されますが、基本となるのが単糖で、ブドウ糖や果糖、ガラクトースなどがその代表です。例えば、赤ちゃんが初めて口にする母乳にはブドウ糖とガラクトースがくっついた乳糖が含まれています。赤ちゃんが甘いものを口にするとほほ笑むのは、母乳と同じ味で心が安らいでいるからかもしれません。

甘いものを上手に活用しよう 試験前に:ブドウ糖を多く摂ると言語の記憶力や流暢さアップしたとの報告が。素早くブドウ糖に分解される砂糖やはちみつなどを摂って試験に臨んでみては。 ダイエットに:最近、キシリトールやエリスリトールなど低カロリーの甘味料も出ています。ダイエットをしたいけど甘いものも食べたいという人におすすめ。 睡眠前に:睡眠を促すホルモン「メラトニン」は、セロトニンが変化したもの。ブドウ糖はセロトニンを分泌しやすくします。 目覚めに:朝起きたときは、血中のブドウ糖が少なくなっています。朝食をしっかり摂って、脳のエネルギー源であるブドウ糖を補給しましょう。

バランスのよい食事を基本に
甘いものは適度な量を

 私たちに最も身近な甘味料といえば砂糖です。ブドウ糖と果糖がくっついているというシンプルな構造なので、すぐに体内で分解されます。疲れたり、低血糖のときなど、急いでエネルギーを補給したいときにぴったり。レモンなどクエン酸を含む柑橘類や、酢に含まれる酢酸を一緒に摂ると、より高い疲労回復作用が期待できます。
 一方、穀類やいも類などに多く含まれるでんぷんはブドウ糖が多数結合した構造になっています。その分、ゆっくりと分解されるので腹持ちがよいという特徴があります。
 1日に必要な総エネルギー量の理想的なバランスは、糖質約60%、脂質約25%、たんぱく質約15%といわれています。糖質はあらゆる食べ物に含まれているので、食べすぎは糖質の摂りすぎにつながります。エネルギーとして使用されなかった糖質は中性脂肪として体内に蓄積されてしまうことも。逆に糖質の摂取を抑えすぎると、エネルギーが不足して疲れやすくなったり、頭の働きが鈍る可能性があるので、適量を守って摂りましょう。
 何より、甘いものを口にすると幸せな気持ちになるもの。この季節、甘いものを持ってお花見に行けば、仲間たちとのおしゃべりも大いに弾むことでしょう。

監修:久保明氏 高輪メディカルクリニック院長・医学博士東海大学医学部抗加齢ドック教授 銀座オクトクリニック名誉院長 東京都再生会中央病院内科副医長などを経て、96年開院。新潟薬科大学客員教授就任。最新医学に基づいた総合医療を目指す。 ダイエットと低血糖の関係とは:糖尿病の慢性の高血糖状態であり、網膜症や腎症などの合併症で生活の質(QOL)を低下させることはよく知られています。しかし、その反対の状態である「低血糖」もまた、体にとっては決して望ましいものではありません。最近、特に低血糖に関連した自律神経障害が注目されています。低血糖は脱力感を大きくし、体を動かすことがおっくうになってしまい、肥満につながりかねません。ダイエットブームのせいか、最近は甘いものを極端に減らす人が増えていますが、健やかな心と体で人生を楽しむためにも、甘いものを上手に摂ることが大切です。