お茶と共に生きる町静岡県

言わずと知れた日本一の茶処、静岡県。
人々の生活にも深くお茶が根付いた地で、お茶農家の福代さんご夫婦を訪ねました。

お茶をつくり、楽しむ日々

福代国広さん、千穂子さんご夫妻は、日本最大級のお茶の生産地として知られている牧之原台地で、お茶とイチゴの栽培に励んでいらっしゃいます。

坂部富士坂製茶農業協同組合 福代国広さん・千穂子さん

坂部富士坂製茶農業協同組合 福代国広さん・千穂子さん

お茶づくりを始められる前は、同じ会社に勤めていたお二人。国広さんのお父さんの畑を引き継ぐかたちで、15年ほど前から本格的にお茶の栽培を行うようになったそうです。

「農家は雨が降っても屋外での仕事がありますし、自分で『この日は絶対に休む』と決めないと休みは取れません。それがつらいところではありますが、反対に考えれば自由だということでもあります(笑)、作ったお茶を家族や知人に贈り、『おいしかったから来年も送ってね』と言われると、やはりうれしいものです」
と千穂子さん。

物心ついた頃からお茶づくりが間近にあったという国広さんとは異なり、千穂子さんのご実家は農家ではないそうです。最初は戸惑いもあったそうですが、
「体を動かすのは気持ちいいものです」
と、笑顔でお茶づくりの楽しさを語ってくれました。

現在、手がけていらっしゃる茶畑の面積は、4.3haほど。

茶畑

農家の仕事は自然が相手。うまくいくことばかりではないそうです。くよくよ考えても時間の無駄。ポジティブに考え、前を向いていこうと日々心がけているそうです。

お茶は、4月中旬からの一番茶(新茶)に始まり、6月の二番茶、地域や農家によっては7月ごろの三番茶と摘み取り、冬は次の年の準備に取り組みます。

「一年を通して、一番茶を目指してお茶づくりをしているようなものなので、いい一番茶ができたときはとてもうれしいですね」
と国広さん。

千穂子さんも、
「いい香りに包まれ、おいしい一番茶を飲んだときは幸せだなあと感じます」
と目を細めます。

3年ほど前からは、ご長男もお茶づくりに参加され、現在、3人で茶畑を運営しているそうです。

お茶づくりのオフシーズンである冬には、イチゴの栽培も手がけていらっしゃいます。

いちご畑

「18aくらいでしょうか。このあたりのお茶農家はオフシーズンにレタスを作っているところが多いのですが、私たちはイチゴに挑戦することにしました。12、3年前から取り組んでいます。お茶ほど体力は使わないのですが、大失敗したこともあります」

お茶やイチゴ以外にも国広さんは趣味として、家庭菜園も手がけています。国広さんのお母さんの菜園を引き継ぐかたちで5年ほど前から始めたそうですが、こちらもかなり本格的。

家庭菜園

「旬の野菜はほぼ自給自足しています。大葉と一緒に、ナスを味噌炒めで食べるとおいしいですよ」
と千穂子さん。

「農家の趣味が家庭菜園って、おかしいですよね」
と微笑まれる国広さん。

冬は白菜や大根なども作っており、家庭菜園をやっていることもあって、食事はお野菜が中心だそうです。

なす

また、家庭菜園も、お茶づくり同様
「地域の人々とのつながりのきっかけになるのがうれしい」
と、素敵なお話も聞かせてくださいました。

お茶の生産・消費量1位のお茶どころである静岡県で生まれ育ち、お茶づくりを行なっているお二人にとって、お茶はとても身近な存在です。

「口にしない日はありません。夏の暑い時期は水出しでいただきます。水筒に入れて、畑にも持参します。また私はご飯党なので、食後にはいつもお茶をいただいています。お茶は飽きないですし、口のなかに残らないのもいいですね。旅行に自分たちのお茶を持参することもあります」

そう言って振舞ってくださったのは、お茶の葉をたっぷり使った水出しの冷茶。前日に冷蔵庫に入れ、12時間ほど経過したものだそうです。甘くまろやかながら、フレッシュで心地よい苦味も感じる、とてもおいしいものでした。

水出し

「お湯でいれるお茶と違い、渋みが少なく、うまみが引き立つんですよね。お茶の葉を贅沢に使い、濃いめに出しています」
と国広さん。

「お茶はあっさりとしているところが気に入っています。子どもの頃から日常的に飲んでいましたし、私が子どもの頃は食卓の上にいつも急須があるのは当たり前でした。今は急須はあまり見なくなりましたが、孫もお茶は大好きでよく飲んでいます」
と千穂子さん。

ほぼ休みなく働くお二人にとって最大の楽しみは、5人のお孫さんと触れあう時間。
休みの日に静岡市や浜松市に買いものに行くのも楽しみで、「平日に行けるのが、農家のいいところ」なのだそうです。

最後に、そんなお二人の夫婦円満の秘訣を伺いました。

千穂子さん:「喧嘩をしても言いたいことを言い合えればそれでおしまい。すっきりします。息子夫婦は喧嘩をしたことがないそうですが、私たちは喧嘩しない日がないくらい。でも孫たちの前ではいいおじいちゃん、おばあちゃんでいたいので、できるだけ控えるようにしています(笑)」

国広さん:「まあ愚痴のこぼし合いのようなものです(笑)。次の朝にはまったく別の話題を話しています」

仲睦まじさとおいしいお茶づくりの秘訣は、そう語るお二人の元気で柔らかな表情にあるようです。

福代さん