柑橘の恵みがめぐる町 山口県 周防大島

瀬戸内の穏やかな海に囲まれた周防大島。
柑橘(かんきつ)の恵みあふれるこの島でお話しを伺ってまいりました。

愛着のある周防大島で暮らす

瀬戸内海に浮かぶ山口県周防大島(すおうおおしま/正式名:屋代島)は、大小合わせ約3,000ある瀬戸内海の島の中でも淡路島・小豆島に次ぎ3番目に大きな島(面積138平方キロメートル)で、本州(山口県柳井市)とは全長1,020mの大島大橋で結ばれています。
冬でも温暖なこの島では柑橘類の栽培が盛んで、山口県の温州みかんは約8割が周防大島で生産されています。

みかん

また、周防大島が、"瀬戸内のハワイ"と呼ばれているのをご存じでしょうか。透き通ったブルーの海や海岸通りに立ち並ぶヤシの木などは、南国の楽園・ハワイを彷彿とさせます。
その周防大島は、2018年10月、思わぬ災害に巻き込まれました。記憶されている方も多いでしょうが、大島大橋に外国籍の大型貨物船が衝突し、1か月強に渡って給水が制限されていたのです。その際、島内の温泉施設「竜崎温泉ちどり」では、大島の住民に無料で温泉を開放していました。
その「竜崎温泉ちどり」で私たちが出会ったのが、温泉のご常連・花房兼信さん、タミコさんご夫妻です。

花房様ご夫婦

花房兼信さん タミコさん

「竜崎温泉ちどり」には、カラオケやレストランも併設されていて、イベントも頻繁に開催されているのですが、カラオケが趣味という花房さまご夫妻は、よくこちらに歌いにいらっしゃるそうです。
ちなみに、タミコさんの十八番は美空ひばり、兼信さんは石原裕次郎とのこと。

「歌うことは認知症予防にいいと聞いて、歌うようになりました。楽しいですし、いいストレス発散になっています。ここでは月に一度、カラオケ大会もあるんですよ。一等賞になったこともあります(笑)」
と、タミコさんは教えてくれました。

花房様ご夫婦

周防大島はタミコさんの出身地。かつてタミコさんは尼崎で喫茶店を営んでいて、そこで神戸出身の兼信さんと出会ったそうです。

「お互いの定年を機に、16年ほど前に周防大島に戻ることにしたんです。当時は私の母も健在でしたし、もともと定年後は島に帰ってくると約束していたこともありました。そうしたら、主人も追いかけてきたんです(笑)」

そう話すタミコさんを、兼信さんは笑顔を浮かべて見守っています。

花房様ご夫婦

「(追いかけようか、どうしようか)ちょっと迷ったんだけどね(笑)」

と照れくさそうに語る兼信さんにとって、島暮らしは初めての経験でした。
印象を尋ねると、

「静かでのどか。いいですよ。もう神戸には戻れないなあ」
とのこと。

兼信さんは島の名産であるみかんもお気に入りで、

「あまり果物を食べる習慣がなかったんだけど、大島のみかんはおいしいですね。甘みが濃いんです。もう大島以外のみかんは食べません」
とおっしゃるほど。

みかん

「竜崎温泉ちどり」のレストランでは、周防大島名物の『みかん鍋』を食べることもできます。
今ではすっかり大島の名物料理となった『みかん鍋』が開発された直後から提供していたそうです。
『みかん鍋』を目的に訪れる観光客はもちろん、大島出身の方が帰省した際、一緒に来たお子さんが「テレビで見た『みかん鍋』を食べてみたい」とリクエストをする、なんてことも増えているのだとか。

みかん鍋

「最初に『みかん鍋』の存在を聞いたときはびっくりしましたが、いただいてみるとおいしいですね。ぜひみなさん食べていってください」と、タミコさんは、私たちスタッフに『みかん鍋』を勧めてくれました。

生まれ育った島自慢のみかんを、ぜひ味わってほしいという気持ちが伝わってきます。

ちなみに、島暮らしに不便な点はないのでしょうか。

「以前は麻雀をやっていたのですが、田舎だと、見ているみんながあの牌を捨てろ、いやこれだとうるさいの(笑)。それで嫌になってしまって、今はもっぱらカラオケです」
とタミコさんが答えると、

「田舎は都会みたいに、さっぱりしてないんですよ(笑)。でもそれが島のいいところでもあるんです。みかんを食べているからなのか、環境がいいからなのか、島の人間はみんな長生きです。魚もおいしいですよ」
と兼信さんも笑います。

花房ご夫妻

どこに行くのもご一緒という花房さんご夫妻。仲がいいですねと声をかけると、

「はい、みなさんにそう言われます。でも二人しかいないんですから、仲良くするしかないでしょう?」
とタミコさん。

花房ご夫妻

最後に、健康のために心がけていることについて尋ねてみると、

タミコさんは「スクワット」と即答。では、兼信さんも──?
「いえいえ、この人は何もしないのよ(笑)」

そんなお二人の間には、周防大島のみかんのように甘やかな雰囲気が漂っていました。

竜崎温泉ちどり

竜崎温泉ちどり
〒742-2805 山口県大島郡周防大島町東安下庄685-2 TEL:0820-77-1234
営業時間 10:00〜 21:00 店休日/月曜日

周防大島の新郷土料理『みかん鍋』

江良様

一般社団法人 周防大島観光協会事務局長 江良正和さん

山口県の温州みかん生産量の約8割を占める「みかんの島」周防大島。島内の農園では、10月から12月頃までみかん狩りを楽しむことができます。

みかん

その周防大島の名物が『みかん鍋』。出汁の中に丸ごと浮かぶ「焼きみかん」はなかなかのインパクトです。

『みかん鍋』が開発されたのは2006年。周防大島観光協会事務局長の江良さんは、

「大島のみかんの認知度を高め、周防大島をたくさんの人に知ってもらうような、みかんの島の象徴となる "アイコン"を作りたいという思いから、農協や漁協などと連携し制作に至りました」
と語ります。

みかん鍋

島内の飲食店経営者や料理人で構成される「周防大島鍋奉行会」によって、島のみかんや、みかんを練りこんだ地魚のつみれを使うことなどの基準が定められています。
この基準をクリアしないと、『みかん鍋』を名乗ることはできません。

みかん鍋

また、『みかん鍋』には、JA山口大島と広島環境保健協会による検査をクリアしたみかんのみを使用しています。
検査をクリアしたみかんに押される「鍋奉行御用達」の焼印は、「安心・安全」の証しなのです。
お鍋で煮られたみかんを、外皮ごといただく『みかん鍋』ならではのこだわりです。
さらに、島内で栽培されるみかんの中でも小ぶりな2Sサイズ(直径約5p)を使用しているのも特徴。

みかん

「小玉のほうがコクがあるんです。周防大島のみかんは、ほかの地域のものに比べ、糖度が3度高く、またコクがあるために、鍋に向いていると思います」

しかし、『みかん鍋』が現在のスタイルになるまではさまざまな試行錯誤がありました。

「最初は、みかん農家さんをはじめ、島内の人たちから大バッシングを受けました。
また、開発当初は、鍋に、丸ごとのみかんは浮かんでなかったんですよ(笑)。みかんは香り付けに使っていて、目に見えるかたちでは入っていなかったんです。
でも『みかん鍋』という名前なのに、名前負けしているのではないかと言われ、浮かべてみることにしたのですが、これが思いのほか、おいしく出来上がりました」

さて、『みかん鍋』の締めは、『みかん雑炊』。

みかん雑炊

こちらもなかなかインパクトのあるルックスですが、わかりますか?
卵白を泡立てた雪のようなメレンゲの上に卵黄をとろりとたらすことで、みかんを表現しているのだそうです。

「少し甘くて、スイーツ感覚で食べていただけますよ」

『みかん鍋』の解禁は毎年11月。認定を受けた12軒(2018〜19年実施店舗数)の飲食店では、それぞれ店の個性をいかした『みかん鍋』がいただけます(提供期間は3月末まで)。

見た目も華やかで、美容にも健康にも効きそう!
そして、何よりさわやかで、おいしいご当地鍋で、みかんを丸ごと味わい、心身ともにぽかぽかと温まってみませんか。

こんな『みかん鍋』も〜大島本陣茶屋〜

大島本陣茶屋

大島本陣茶屋

周防大島のシンボルでもある大島大橋を眼下に見下ろす小高い丘にたたずむ、茅葺屋根の「大島本陣茶屋」。
長く食肉卸として肉を専門に扱ってきた同店では、その強みをいかし、『みかん鍋』の姉妹鍋『みかんしゃぶしゃぶ』を提供しています。

みかんしゃぶしゃぶ

『みかん鍋』と同じように、みかんを浮かべた出汁にくぐらせていただくお肉はさっぱりとしながら、旨味も存分に感じることができます。鶏のミンチ肉にみかんを練り込んだ、つくねも風味豊かです。

その「大島本陣茶屋」でお会いしたのが、君岡泰照さん、弘子さんご夫妻です。
弘子さんは周防大島のご出身。現在、ご夫妻は、大島大橋で周防大島と結ばれている、柳井市にお住まいです。

君岡様ご夫婦

君岡泰照さん 弘子さん

泰照さんは、
「『みかん鍋』が登場したときは、いったい何をどう間違えたんだ?と驚いたものです(笑)。
ただ、実際に食べてみると、いくらでも食べられてしまうかと思うくらいおいしい」
とのこと。

弘子さんからは、『みかん鍋』を食べる際のアドバイスをいただきました。

「お鍋でぐつぐつと煮込んだみかんは、とても熱くなっているので、気をつけて食べてくださいね。
またお店によって味わいが異なるので、食べ比べてみるといいですよ」。

みかんしゃぶしゃぶ

長くこのエリアで暮らしてきた君岡さんご夫妻にとって、大島のみかんは生活になくてはならないアイテム。

「シーズン中は、1日に2、3個食べることも珍しくありません(笑)。みかんは、サラダに入れることもあります。皮は乾燥させて、お風呂に入れています」(弘子さん)
泰照さんには、「子どもの頃から果物といえばみかんでした」と、みかんとの長く深い関係を語っていただきました。

君岡様ご夫婦

そんなお二人は、2018年で結婚50年を迎えたそうです。

「よく、50年も持ちました(笑)。今年は旅行に出かけようと思っています」と弘子さん。
夫婦円満の秘訣を伺うと、「言いたいことを言い合って、それを引きずらないこと」と泰照さんが答えてくれました。

君岡様ご夫婦

最後に、周防大島の良いところについても質問してみました。

「みかんも魚もおいしいです。地元のおいしいものをたくさん食べるのが、長く健康でいられるコツかもしれませんね。これからも『みかん鍋』をどんどんいただかないと(笑)」
と泰照さん。

「空気もおいしいし、景色もいい。本当に良い場所です。ぜひ大島みかんを食べに、遊びに来てください」
と弘子さん。

気候も人も温暖な「みかんの島」で、いつまでもお元気で、仲良くお過ごしください。

大島本陣茶屋

大島本陣茶屋
〒742-2101 山口県大島郡周防大島町西三蒲16-1 TEL:0820-74-1066
営業時間 昼/11:00〜14:30 夜/17:30〜20:30 年中無休