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2021年9月1日掲載
災害は、発災後の在宅避難、避難所、仮設住宅など避難場所での食生活や自活が可能かどうか・・・などで対策や支援は異なります。さまざまな状況が想定されますが、 平時からのシミュレーション・備えが発災後の健康被害を最小限に留めることができる可能性があります。 今回は、東日本大震災など実際の災害で管理栄養士として支援に赴いた奥村様に、「食」にまつわる「防災」について聞きました。
監修
奥村 圭子
管理栄養士 主任ケアマネジャー
JDA-DAT(日本栄養士会災害支援チーム)リーダー
1990年 食品会社研究所
2000年〜2018年
病院、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、クリニック、委託給食会社、デイサービスなどで管理栄養士業務、
居宅介護支援事業所でケアマネジャー
2011年〜 災害支援(東日本大震災、西日本豪雨)
2018年〜 地域ケアステーション はらぺこスパイス設立
地域を中心に食の支援を行う
復興公営住宅にて医師や地元の管理栄養士らとボランティアによる栄養パトロール開始
【目次】
まずは、今準備されている「防災」について見直してみましょう。以下の4つのポイントを確認してみてください。
災害が起きた際、避難所などの安全な場所に避難するのに重たい荷物では動けません。 家族全員の食糧を3日分・・・など準備することも大切ですが、ご自身が持ち運べる程度の重さ(2〜3s程)で準備しましょう。 また、避難所に行けば非常食やパン・おにぎりなどの食べ物は配給されることが考えられます。 持ち運びや備蓄品の優先順位を考えるとできるだけ軽くてコンパクトな食品を用意することと、同じような食事で飽きて食欲が減ってしまわないように、 ご自身が好きな食品をを入れておくこともおすすめです。
災害が起き、支援物資が届くまでに最低3日ほどかかると言われています。 避難所に避難している場合でも、ご自身の家に入ることができる状況であれば、日中家に食糧を取りに行くことができます。 そのため、ご家庭にはご家族3日分の水や食糧、薬などは常備しておきましょう。 尚、保管する際には、例えば2階がある場合は2階の奥の方に保管したり、物が倒れてきても壊れない頑丈な箱に入れたり、安全で狭い空間に保管する、など、地震でつぶれず高温にならない災害に耐えうる場所に保管するようにしましょう。
災害時、衛生面は特に気をつける必要があります。平時では分かっていても緊急事態に食の安全性を考える余裕が無いため、備蓄品が災害時に腐ったりせずにきちんと食べられるものかを確認することは最低限平時でもできる準備の一つです。 そのため、非常用袋に賞味期限を書いたタッグをつけたり、年に1回は非常用袋の中身についても確認し、災害時の食についてご家族で話したり、シミュレーションする時間を作りましょう。
災害時には配給される食糧は限られ、病院も被災してしまうことが考えられます。そのため、ご家族にどんなアレルギーがあるか、そしてお薬手帳は準備しておくようにしましょう。 また、高齢の方は義歯の紛失も多いため、かかりつけの歯の先生や電話番号も記載しておくことをおすすめします。
4つのポイントはいかがでしたでしょうか?
続いて、東日本大震災などの現地の支援で考えた「防災と食」に関するお役立ち情報をご紹介します。
冷凍庫は常に満タンにしておくと、状況にもよりますが、停電し冷蔵庫が使えなくなっても、しばらくは保冷がききます。 冷凍ご飯や自然解凍で食べられるおかずはそのまま食べる事ができ、解凍されたものから食べていけば食糧を無駄にせずにすみます。 袋入りの氷や冷凍野菜、冷凍フルーツなど常に満タンに保管しておくことで、冷凍庫が一つの備蓄庫としても利用できます。
袋入りの氷・・・溶けると水としても使え、容器も入れ物として使えます。
冷凍ごはん、自然解凍で食べられるおかず、冷凍野菜・フルーツ・・・自然解凍でも食べられるものは日頃から好みに応じて入れておくと便利です。
クーラーボックスには、食器類(直火可能なアルミ皿、ラップ、紙コップ、重曹、新聞紙など)を入れておくと便利です。 また、発災直後に余裕があれば冷凍庫の中身をクーラーボックスに移すことで、保冷が長くなり、電気が停まっても食糧の腐敗を遅らせることができます。
被災し、避難所などで生活することになった場合、家族単位の生活から集団生活になります。集団生活になると、平時の生活のルールは通用せず、例えば雑魚寝になり、物音やにおいに敏感になることでストレスをかかえるようになります。 人によっては、不眠や食欲低下を招いたり、運動不足や偏食などで太ったり、血圧や血糖値が高くなったり、水分不足からの脱水やエコノミークラス症候群などが想定されます。 そのため、家族で集団生活になった時のシミュレーションをしたり、可能であれば自治体とも話をしておくのもよいでしょう。
避難所などでの食事の配給は、おにぎりや菓子パン、保存性の高い塩分の高い漬物や揚げ物、野菜の少ないおかずなど糖質や脂肪中心の塩分の高い食品が続く可能性があります。 これらのことから、たんぱく質、ビタミンA、ビタミンB1、B6などのB群、ビタミンC、カリウム、カルシウム、鉄分、ヨウ素、食物繊維・・・つまり炭水化物(主食)以外が不足しやすいと考えられます。 栄養面と持ち運びの手軽さを考え、きなこや海苔、シリアルやナッツ、野菜飲料などを意識して摂ることもおすすめします。
野菜飲料は、日常飲みながら在庫しておくことで、賞味期限を気にせずに備蓄することができるので便利です。 また、災害時には偏りがちな栄養も、野菜飲料や粉末の青汁などを活用すればおいしく補うことができます。
ゆで汁の代わりに野菜飲料を使ってパスタ数時間おいてふやかします。オイル入りのツナ缶を加えて1、2分炒めれば完成! リコピン・ビタミンA・ビタミンCがとれ、GI値が低いので血糖値が気になる方におススメです。
おにぎりに青汁粉末をまぶして食べれば、たとえ食べ飽きたおにぎりでも違った味わいで、かつ野菜の栄養が補えます。
通常水やお湯でふやかすアルファ米。野菜飲料でふやかせばリゾット風に。同時に野菜の栄養も補えます。
これまで、管理栄養士として東日本大震災などの支援に携わってきました。
特に災害の終息が長期化すると、食の偏りで例えば炭水化物ばかりを食べ運動をしないなどで「とても太ってしまう」か、食べられなくなり「とても痩せてしまう」か、などあまりいい栄養状態ではなくなる方を多く見てきました。
そのため、平時の際に少しでも「防災と食」についてどういうことが起こりうるかシミュレーションしておくことはとても大切です。
また、日本栄養士会の取り組みとして「特殊栄養食品ケア・ステーション」があります。
アレルギーや食に不安がある場合、避難先に特殊栄養食品ケア・ステーションが利用できるかどうか、お住いの都道府県栄養士会や自治体に事前に確認されると良いかと思います。
一人で「防災と食」について考えるのではなく、ご家族、自治体、ケア・ステーションとも連携し、助け合うことが「防災」につながります。