対談 株式会社林原 研究部門 食品開発部 食品開発課 遠藤伸課長×伊藤園 中央研究所 研究二課 田形千佳

血がめぐること・「ヘスペリジン」とは?

さまざまな素材や健康成分の研究・開発に取り組む株式会社林原の遠藤伸課長と伊藤園・田形千佳研究員に、「冷え」を感じる方におすすめの成分「ヘスペリジン」について聞きました。

冷え性で悩む日本人が増加している

遠藤:古くから「冷えは万病の元」と言われています。最近では日本人の平均体温が50年前に比べて低下していることや、冷え性に悩む方が年々増加しているということが注目されています。冷えといえば女性というイメージを持たれている方も多いのですが、男性でも4割の方が冷え性を自覚しているという調査も報告されています。

Qあなたは、ご自分が冷え性だと思いますか?(回答者:600名) 冷え性計75.3% 冷え性である41.8% 冷え性かもしれない33.5% 冷え性だとは感じない24.7%

田形:私をふくめ、女性たちは、やはり冷えを実感している人が多い印象です。冬場はもちろん、暑い季節でもオフィスや商業施設などでは冷房が効いていますから、年間を通して冷えの対策が必要かもしれませんね。また、数年前から「温活」という言葉が出てきたように、体温と健康の関係が注目されています。体温が低くなると、体内の臓器の機能低下を招き、病気を防ぐ免疫機能にも影響を及ぼすと言われています。

遠藤:冷えはいろいろなことが原因となって起こりますが、特に体の中を流れる血のめぐりと密接に関わっています。血流が滞ると、心臓から送り出される温かい血液が体全体まで行き渡らなくなり、冷えを起こします。冷えが進行していくと、疲労感や肩こり、腰痛、だるさなどを生む原因となります。「人は血管から老いる」と言われるほど、血管というのは人の体にとって重要な役割を果たしているんです。

遠藤課長

株式会社林原 研究部門 食品開発部 食品開発課 遠藤伸 課長

田形:体の隅々まで血液が届かないことによって、手足の先など、特に体の末端に冷えを感じる末端冷え性に悩む方も多いですね。体内には動脈と静脈、2種類の血管がありますが、2つの血管の間をつなぎ、体全体に張りめぐらされているのが毛細血管です。すべての血管の長さを合計すると約10万km、地球を2周半するほどの長さになります。

田形さん

伊藤園 中央研究所 研究二課 田形千佳

遠藤:血管は、大動脈、小動脈、毛細血管と枝分かれしていき、だんだんと細くなっていくのですが、毛細血管が潰れていたり、消えてしまいそうになっていたりする状態を「ゴースト血管」と言います。毛細血管がゴースト化してなくなってしまうと、その先に血液を運べず、細胞に酸素や栄養を届けることができなくなり、さまざまな不調の原因と指摘されています。そのため末梢血流の改善は重要です。

田形:末梢血流改善の助けとなるのが「ヘスペリジン」という成分ですね。

期待の成分「ヘスペリジン」とは?

遠藤:「ヘスペリジン」という言葉を知らないという方もまだまだ多いと思いますが、実は、みなさんが普段からよく食べているみかんやオレンジなどの柑橘(かんきつ)類に含まれる成分で、ポリフェノールの一種です。ふだん私たちが食べている果実よりも、捨ててしまっている皮や小袋により多く含まれています。

皮や袋に多く含まれるヘスペリジン

田形:きれいに皮をむいてみかんを食べると、体に取り入れられる「ヘスペリジン」が少なくなってしまうなんて、なんだかもったいない話ですね。

遠藤:そうですね。ですがもともと、みかんの皮を乾燥させたものは生薬の一種「陳皮(ちんぴ)」として漢方医学で古くから親しまれています。血流改善作用やストレス軽減作用など「ヘスペリジン」の健康効果は昔から注目されていたのですが、水に溶けにくく体内に吸収されにくいという難点がありました。それが従来の10万倍水に溶けやすい「糖転移ヘスペリジン」の開発によって体内への吸収性が格段に高まり、身近な食品に活用することが可能になりました。

田形:「ヘスペリジン」が、みかんなどの柑橘類という、身近な自然食品から作られる成分であるということに、伊藤園としても着目しています。血流改善や健康な血管の維持など、お客さまの健康に役立つ商品を自然由来の成分で実現すべく、商品開発に取り組んでいます。

ヘスペリジンの効果・効能

遠藤:ヘスペリジンは、自律神経系を調節したり、血管に直接働きかけることで血管の柔軟性を高め、血流循環を促します。血液には体内に栄養や酸素を届け、細胞から老廃物を運び出す運搬係の役目があるほか、熱を運ぶ役割があり、体温調節にも密接に関わっています。暑いと人は皮膚の血管を拡張させて熱を逃がし、寒いときは皮膚の血管を収縮させて熱を逃さないようにしています。

田形:赤ちゃんの皮膚が赤いのは、血流が良いという証拠ですね。また運動をすると血色が良くなります。体が暑いと感じたときは、熱を逃がそうとして血管を広げて熱を放射して体温の上昇を防ぐ。汗をかくというのも体温調節のひとつですね。

ヘスペリジンで冷え性が改善 冷え性の自覚症状の変化 モノグルコシルヘスペリジンを摂取することにより、冷えの実感が抑えられました。 ※モノグルコシルヘスペリジンとはヘスペリジンにブドウ糖(グルコース)を結合させ、水に溶けやすくしたものです。 出典:ヘスペリジン研究会設立記念セミナー(2008年9月12日)の内容よりグラフを作図 遠藤課長に聞くヘスペリジン研究 「ヘスペリジン」とは、みかんやオレンジなどの柑橘類から抽出された天然の有効成分で、さまざまな研究結果が報告されています。 ・冷え性改善・血流改善・中性脂肪低下・ストレス改善・血圧上昇抑制など

遠藤:「みかんが黄色くなると医者が青くなる」ということわざも、みかんの栄養の豊富さを表していると考えることもできますね。風邪予防、寒さに強い体作りなど、冬にみかんを食べることは環境や食習慣に沿った生活の知恵だったのではないかと思います。冬至の季節に柚子湯に入るというのも、寒さ対策に有効です。柚子にも「ヘスペリジン」が豊富に含まれていますので、体がポカポカ温まりますね。「ヘスペリジン」は、皮膚温度の維持効果も確認されています。

田形:「寒い冬の季節にこたつでお茶とみかんを食べる」という昔からおなじみの日本人の習慣も、「ヘスペリジン」で血流を改善するという、理にかなったものだったんですね。

遠藤:さらに、みかんにはビタミンCが豊富に含まれていますが、「ヘスペリジン」はビタミンCとの相性も良いですね。私たちが研究を進めている項目のひとつに「生体内のビタミンC維持」というテーマがあるのですが、「ヘスペリジン」はビタミンCのリサイクルを助けるという研究結果が出ています。人はビタミンCを体内で作ることができないため、毎日の食事から摂る必要があります。一方で、体の中ではビタミンCを有効利用するためにリサイクル機構が備わっており、体内の代謝に役立てています。

田形:ビタミンCも日々の健康のために欠かせない成分ですね。早寝早起き、バランスのとれた食事、運動が健康の大前提ですが、みなさまにも、「ヘスペリジン」を毎日の生活に取り入れることで、より健康的な生活を送っていただきたいですね。

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