ドクターズアドバイス 意外と知らない!

元気で長生きの秘訣(ひけつ)は、
口の中を清潔に保つこと!

この先生に聞きました
東京大学大学院医学系研究科 イートロス医学講座 特任准教授 米永一理(よねなが かずみち)

東京大学大学院医学系研究科
イートロス医学講座
特任准教授

米永一理(よねなが かずみち)

鹿児島大学歯学部卒業後、東京大学で研修し、東京大学大学院に進学。その後東海大学医学部を卒業し、十和田市立中央病院で研修。東京大学医学部附属病院顎口腔外科・歯科矯正歯科助教、十和田市立中央病院総合内科医員、JR東京総合病院総合診療科医長、JR東京総合病院地域医療連携相談センター長、十和田市立中央病院附属とわだ診療所院長などを経て、2020年4月より現職。

口の中の状態は、歯や歯茎はもちろん、全身の健康に関連することをご存じでしたか?
毎日実践したい正しい口腔ケアの方法を、歯科医で医師でもある米永一理先生に伺いました。

歯の状態が悪くなると健康にも影響が!

 口の中を清潔に保つことは、虫歯や歯周病などの予防だけでなく、全身の健康にも役立つことが最近になってわかってきました。

 例えば、口の中にいる細菌が歯茎から入り、血流によって全身に菌がばらまかれると、糖尿病や心血管疾患、認知症といったさまざまな病気につながります。それらを防ぐためにも、正しい口腔ケアを身に付けましょう。

歯周病菌

口の中の細菌が血流に乗って、全身に広がると、多くの病気を発症させたり悪化させたりすることがわかっています。

口腔ケアを怠ると、細菌が増殖!

 きちんと歯磨きを行っているつもりでも、習慣でなんとなく歯ブラシを動かしているだけで磨き残しがある方は意外と多いのです。

  • 1 食べかすをエサにプラーク(歯垢)ができる 虫歯菌 歯周病菌 プラーク1gに100〜1000億個の細菌が!
  • 2 約48時間でバイオフィルムができる 排水溝のぬめりと同じ
  • 3 石灰化して歯石になる

歯の表面がネバネバ、ザラザラしていたらプラーク(歯垢)がついている証拠。バイオフィルムができる前に、しっかりと歯磨きすることが大切です。

 食べかすが残っていると口の中にいる細菌がそれを分解してネバネバした物質を作り、歯の表面にへばりつきます。この細菌の塊がプラーク、または歯垢と呼ばれるものです。プラーク1gには細菌が約100〜1000億個もいるとされています。

 プラークがついてから48時間程度たつと、バイオフィルムという、台所やお風呂場の排水溝にできるぬめりのようなものになり、さらには石灰化して歯石になります。こうなるともう、自分では落とすことができません。

1日に1回は必ず口の中をリセット

 最低でも1日1回は徹底して口の中をキレイにすることを心がけましょう。夜寝る前などに、じっくりと時間をかけて隅々まで磨くことをおすすめします。

正しい口腔ケアのポイント
  • 最低でも1日1回は時間をかけて丁寧なケアを

    1日3回の適当な歯磨きより、1日1回の丁寧な歯磨きのほうが磨き残しは少なくなります。就寝前などに5〜10分かけて隅々までしっかりと磨きましょう。

  • 歯磨きは5〜10分かけて
  • 歯ブラシは鉛筆握りで軽く持つ
  • 磨くときは力を入れてゴシゴシこすらない

    年を重ねると歯茎が下がって歯の柔らかい部分が露出し、強く磨くと傷がついてしまいます。歯ブラシは鉛筆握りで軽く持ち、やさしく動かしましょう。

  • 歯ブラシは3か月に1回を目安に交換

    歯ブラシを柄の裏側から見て、毛先が見えたら交換の目安です。また、あまり長く使うとコシがなくなってうまく磨けなくなるので、定期的に交換しましょう。

    定期的に歯科を受診してメンテナンス

    痛みなどがなくても定期的に歯科医院に行くのがおすすめです。歯石を取ったり、磨き残しをチェックして正しいケアを教わったりすることができます。

  • 歯ブラシは定期的に交換

 口のまわりには多くの神経があり、歯磨きなどの刺激が認知機能の維持につながります。つまり、口腔ケアには清掃だけでなく、さまざまな機能を高める役割もあるのです。元気で長生きするために、今晩から歯磨きタイムを見直してみてはいかがでしょうか。