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お客様の声
感染症対策で自粛生活を送る間に、太ってしまったという声をよく聞きます。
健康診断へ行く方が多くなるこの秋。対策について専門家に伺いました。
佐賀大学農学部生物資源科学科
生命機能科学コース
食品機能開発学分野 准教授
井上 奈穂(いのうえ なお)
佐賀大学農学部卒、同大学院修士課程修了、鹿児島大学大学院博士課程修了、博士(農学)。日本学術振興会特別研究員、順天堂大学大学院医学研究科非常勤助教および順天堂大学医学部スポートロジーセンター特別研究員、東北大学大学院農学研究科助教、山形大学農学部准教授を経て、2020年より現職。
──そもそもコレステロールとは何ですか。
井上 体の中には、4種類の脂質があり、それぞれ健康を維持するために必要な働きをしています。そのうちコレステロールは、細胞膜やホルモンの材料となります。
──でも、数値が高いと健康指導の対象になりますよね?
井上 コレステロールには、LDLコレステロールとHDLコレステロールがあり、問題とされるのは主にLDLコレステロールです。コレステロールは肝臓から血液によって全身を巡るのですが、血液中のLDLコレステロールが増えすぎると、血管内にたまって動脈硬化の原因になります。これがコレステロールに注意が必要だといわれる理由です。一方、HDLコレステロールは余分なコレステロールを回収して肝臓に持ち帰ってきます。
──それで、LDLコレステロールを悪玉コレステロール、HDLコレステロールを善玉コレステロールというんですね。
井上 その通りです。ただLDLコレステロールの値が基準値に納まっていてもHDLコレステロールの値が低ければリスクは上がるので、L/H比という、両者のバランスも注目されています。
──中性脂肪についても教えてください。
井上 中性脂肪は人間の活動のエネルギー源になるという重要な働きがありますが、使われなかった分は内臓脂肪や皮下脂肪などに蓄えられて、肥満につながります。また、血中の中性脂肪の増加はLDLコレステロールの増加同様、動脈硬化のリスクを高める原因ともなります。
体の中にある脂質のひとつ。総コレステロールは、血液中に含まれるコレステロールの総量です。LDL(悪玉)コレステロールは多すぎると血管を詰まらせ動脈硬化を引き起こしますが、HDL(善玉)コレステロールは、それを抑制する働きがあります。
基準値
総コレステロール
140〜199mg/dl
LDLコレステロール
60〜119mg/dl
HDLコレステロール
40mg/dl以上
人間にとって重要なエネルギー源のひとつですが、使われなかった中性脂肪は、内臓脂肪、皮下脂肪として蓄えられます。また、血液中の中性脂肪が多い状態が続くと、動脈硬化のリスクが高まります。
基準値
30〜149mg/dl
LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値のことで、LDLとHDLのバランスを見る指標です。
基準値は健康保険組合により異なるため、「日本人間ドック学会 検査表の見方(2018年4月改訂版)」の値を参考にご紹介しています。
──LDLコレステロールや中性脂肪を下げるために、日常生活の中でできる工夫はありますか?
井上 脂質を多く含む食品を控えることと、適度な運動が効果的です。あと、茶カテキンを多く含む緑茶飲料を飲むのもいいですね。茶カテキンには、LDLコレステロールを含む総コレステロールを下げ、中性脂肪の吸収を抑える働きがあります。この働きは、茶カテキンの中でもガレート型が強いことがわかっています。
──茶カテキンだけで、コレステロールや中性脂肪の数値は改善できますか?
井上 残念ながら、カテキンを摂れば大丈夫というわけではないのです。食事の改善や運動などの効果を、後押ししてくれるのがカテキンだと考えるといいかもしれませんね。硬くなり、傷ついてしまった血管を元通りにすることはできませんが、これ以上悪化させないことが大切です。
──カテキンはいつ摂ればいいでしょうか?
井上 おすすめは、食事と一緒に毎日継続して飲むこと。外気温が下がるこれからの季節は、夏よりも代謝が上がるので、習慣にしてみてはいかがでしょうか。
LDL(悪玉)コレステロールが低下
●出典:Kajimoto O et al. J Clin Biochem Nutr 33,101-111.(2003)
●被験者:血清総コレステロールが高め(180-260mg/dl)の健常な男女60名
●摂取方法:朝夕食時に1本、3ヶ月間摂取。 一方はガレート型カテキン1本当り197.4mgを含有する飲料を、もう一方は茶カテキンをほとんど含まない飲料(対照)を摂取
総脂肪面積が低下
●出典:鈴木裕子ら 日本臨床栄養学会雑誌 29,72-80(2007)
●被験者:BMI23-30、血清総コレステロールが高め(200-260mg/dl)の健常な男女73名のうち40歳未満の女性を除く66名(内臓脂肪測定者数)
●摂取方法:昼夕食時に1本、3ヶ月間摂取。一方はガレート型カテキン1本当り169.7mgを含有する飲料を、もう一方は茶カテキンをほとんど含まない飲料(対照)を摂取