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大阪大学大学院歯学研究科
予防歯科学教室 教授
天野敦雄(あまの・あつお)
大阪大学歯学部卒業、同学部予防歯科学教室助手、ニューヨーク州立大歯学部博士研究員、大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部講師を経て、2000年同大学教授。2015年から4年間大阪大学大学院歯学研究科長・歯学部長を務めた。2021年日本口腔衛生学会理事長を務める。難解なバイオロジーを軽妙に解説する語り口が、わかりやすくておもしろいと好評を博している。
歯を失う2大原因は歯周病と虫歯。特に歯周病は自覚症状がほとんどなく、気づいたときには手遅れに。
歯周病のリスクと予防法を、大阪大学大学院歯学研究科の天野敦雄先生に伺いました。
60代になると歯周病や虫歯で歯を失う人が急激に増え始めます。80歳の歯の残存数は平均12本ですが、右図のように定期的にケアしている人とそうでない人では大きく異なり、自分の歯が1本もない人はなんと2割(※)にのぼります。
※ 平成28年歯科疾患実態調査 (西田 亙『内科医から伝えたい 歯科病院に知ってほしい糖尿病のこと その2』 医歯薬出版より)
日本臨床歯周病学会 資料(長崎大学・新庄文明教授のデータ)より
歯と歯ぐきの間にプラーク(歯垢)がたまり、プラークの細菌によって歯肉が炎症を起こすと歯周病の発症です。歯と歯ぐきの境目の溝が深くなり、歯周ポケットと呼ばれるようになります。
歯周病菌が歯ぐきから血管内に入り込むと、全身を巡って脳梗塞や心筋梗塞といったさまざまな病気を引き起こしたり、糖尿病や認知症などを悪化させる原因となります。
高齢になると歯を失う人が増えますが、その一番の原因となるのが歯周病。歯周病は、細菌感染で起こる炎症により、歯ぐきや歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。歯の本数が減ると食べものがよく噛めなくなり、栄養が偏って全身の機能低下につながります。
また、歯周病菌や炎症物質が血流に乗って全身にまわると、心筋梗塞や脳梗塞の要因になるほか、糖尿病や認知症を悪化させたり、誤嚥性肺炎のリスクを高めたりすることがわかっています。最近では、歯周病がある人はインフルエンザや新型コロナウイルスが重症化しやすいとの指摘もあります。
歯周病を防ぐ一番の方法は、毎日の歯磨きで口の中のプラーク(歯垢)を取り除くことです。プラークは菌の塊で、ほんの1mgに1億もの細菌が潜んでいます。2〜14日たつと歯石となって歯ブラシでは落とせなくなるため、就寝前など1日1回は隅々まで丁寧に歯を磨くことを習慣にしましょう。ちなみに、忙しい朝食後や昼食後は、口の中の食べカスをざっと落とす程度でも歯周病予防にはOKです。
一方、虫歯予防としては食後早めに磨くのが効果的。食べカスは虫歯菌の栄養源であり、虫歯菌は食後口の中が酸性に傾いているときに活性化するからです。
また、自宅での歯磨きと同じくらい大切なのが、歯科医院でのケアです。1年に3回を目安に、磨き残しのチェックや歯石の除去、高濃度のフッ素塗布などをしてもらいましょう。歯科医院は歯が痛くなってからではなく、痛くならないように行く場所。ぜひ、積極的に利用してください。
歯磨きは食後3分以内。1日1回は時間をかけて
1日1回は時間をかけて隅々まで磨きましょう。手磨きでは磨き残しが発生しやすいため、電動歯ブラシがおすすめ。歯磨き粉はフッ素入りのものがいいでしょう。
歯ぐきの出血は、
気にせずに歯磨きを
歯磨き中の出血の多くは歯周病が原因。適切な歯磨きで歯ぐきの炎症が治まれば出血は止まります。フロスなどで歯と歯の間を磨くのも忘れずに。
1年に3回は、
プロのケアを受けましょう
歯磨きでは落とせない歯石や歯周ポケットの奥のプラーク(歯垢)は、歯科医院で除去することが必要です。定期的に通う習慣をつけましょう。