ドクターズアドバイス 乾燥する季節は要注意!

乾燥肌と乾皮(かんぴ)症には、
肌の水分を保つ対策を!

この先生に聞きました
中東遠総合医療センター 参与 浜松医科大学 名誉教授 戸倉新樹(とくら・よしき)

中東遠総合医療センター 参与
浜松医科大学 名誉教授

戸倉新樹(とくら・よしき)

浜松医科大学医学部卒業、米国エール大学皮膚科リサーチフェロー、産業医科大学皮膚科学教授、浜松医大皮膚科学教授などを経て、2021年より現職。アレルギー疾患研究センター長、日本研究皮膚科学会理事長、日本皮膚免疫アレルギー学会理事長なども務める。40年以上にわたり、皮膚免疫・アレルギー疾患を中心に研究。丁寧な問診と治療法により、患者の信頼も厚い。

冬になると、すねやかかと、胴まわりなどの乾燥に悩まされるという方は多いのではないでしょうか。
肌が乾燥する原因と対策を、皮膚科医の戸倉新樹先生に伺いました。

冬は気をつけたい「老人性乾皮症」とは

 私たちの肌の皮膚の一番外側には「角層」という細胞が平たく積み重なった部分があります。厚みは0.02ミリ以下とラップフィルムほどですが、この角層に水分を保つための3つの仕組みがあります。それは、上のイラストでも紹介している皮脂膜、天然保湿因子、角質細胞間脂質です。もともと海の中にいた人類の祖先が乾燥した陸上で暮らすために、進化の過程で備えてきた機能です。

 ところが、空気が乾燥する冬は、この仕組みの働きが悪くなり、皮膚表面の水分が失われて乾燥肌になります。また、加齢とともに乾燥しやすくなるのが、いわゆる「老人性乾皮症」です。乾皮症はかゆみを伴うことが多いのですが、かいてしまうと、さらに大きなかゆみを感じるようになり、赤みやブツブツした湿疹ができることもあります。

肌のうるおいを保つ機能は加齢で衰える!?

角層の断面図 角層(厚さ0.02mm以下) 皮脂膜 皮脂と汗が混じったものが膜のように皮膚を覆い、水分蒸発を防ぐ。 天然保湿因子 アミノ酸などで構成されている。水分を抱え込んで離さない役割を担っている。 角質細胞間脂質 角質細胞の間にあるセラミドを中心とした脂質。水分をぎゅっと挟み込んで逃がさない。

皮膚の水分を保っているのは、一番外側にある「角層」という部分です。加齢により、水分を保持する仕組みが衰え、皮膚の乾燥を実感する人が多くなります。

大切なのは、皮膚表面の「角層」の水分保持

 それを防ぐためには、体内でうまく分泌できなくなった保湿成分を保湿剤などで補い、肌の水分量を保つことが大切。日常生活では室内の乾燥に気を配りましょう。また、熱いお風呂に長く浸かることは避け、かゆみが強い場合は、ぬるめのシャワー浴がおすすめです。湿疹ができたり、かきすぎて傷になったりした場合は、皮膚科を受診してステロイド剤などで治療を行いましょう。

保湿剤は特徴を知って上手に使い分けを

購入する際は商品に載っている成分を確認しましょう。

  • 水分の蒸発を防ぐ成分 皮脂に代わり、皮膚の上に膜を張って内部に水分を閉じ込める。 ワセリン ラノリン スクワラン など
  • 保水効果がある成分 天然保湿因子や角質細胞間脂質の働きを助け、水分を抱え込む。 ヘパリン類似物質 尿素 グリセリン ヒアルロン酸 水溶性コラーゲン セラミド など

皮膚内部の水分が少なくなっている「老人性乾皮症」には、蒸発を防ぐだけではなく、保水効果のある成分が含まれているものも組み合わせて使用するのがおすすめです。

「たかが乾燥肌」と思わずに、日々のケアを

 角層には、紫外線や雑菌、異物などの侵入から皮膚を守るという大切な役割(バリア機能)がありますが、その力を発揮するにも、角層内が水分で満たされていることが必要です。「たかが乾燥肌」と思わずに、日々のケアに努めてください。

日常生活でできる乾燥肌対策

  • 加湿器で湿度を保つ

    暖房器具は室内の空気を乾燥させてしまいます。加湿器を使用するなどして適度な湿度を保ちましょう。

  • 入浴時は長湯に注意し、体はやさしく洗う

    熱いお風呂や長湯は皮脂膜や角層内の細胞間脂質を溶かして乾燥肌の原因となります。同様に、体をゴシゴシ洗うのもNGです。

  • 浴室にクリームを置いておく

    入浴後は肌が一番乾燥しているため、保湿のベストタイム。浴室にクリームを置いておけば、すぐに塗ることができます。

  • 保湿クリームを塗った後、ティッシュペーパーを当てても落ちないくらいが適量です。

  • 保湿クリームはたっぷり塗る

    • 保湿剤は使用量が少ないと効果も半減します。両手のひら程度の面積に塗るなら、人差し指の関節ひとつ分くらいが必要です。